ネコとイヌの共通の祖先

ネコといえばイヌ、イヌといえばネコの、そのイヌとの比較を少しばかり試みておこう。イヌ類もこと狩猟にかけては、ネコ類に劣ちぬ秀でた存在だ。彼らはネコ類とともに、哺乳類の中の捕食専門家の集団である食肉目を代表している。

けれども、イヌが獲物を捕らなくなったという嘆きの声を聞いた人がいるだろうか。しかもおそらくは、獲物を捕ろうとしないイヌは、ネコ以上に多いにちがいない。人間とチンパンジーの歴史を遠くさかのぽれば、サルに似た共通の祖先にたどりつくであろうのと同様に、ネコとイヌも共通の祖先を有する親類どうしである。にもかかわらず、あるいはそれだからこそ、この2つの動物は、ことごとく対照的な性質をそなえるに至っている。

彼らの系統をたどった共通の祖先とは、今から数千万年の昔、第三紀に栄えたミアキスと呼ばれる動物であった。ミアキスは姿が今日のテンやイタチに似た、そして彼らほど知能の高くない原始的な捕食獣である。この時代には人間はもちろん姿を現わしていなかったし、ウマもウシもネズミも原始的で、今日の世界でなじみ深い姿に達していた哺乳類はほとんどいなかった。

見かける動物はすべて、いかにもやぼったい姿をした動物たちばかりである。だからミアキスの脳が発達していないのも、少しも不思議ではない。四肢の構造からみて、彼らは樹上をとくいのすみかとしながら、小動物を捕えて生活していたものと推定される。

今からみれば原始的な食肉獣ではあるが、当時のミアキスは、獲物に対する攻撃を体の前部に集中する新しいテクニックをあみ出して、捕殺の能率を飛躍的に増大させた功労者であった。この方法によれば、獲物を比較的すばやく殺せるうえに、その報復攻撃をさけることができる。

さらに、くりかえしかむことと、獲物をふりまわすことの2つのテクニックが加えられて改良されたのが、現在のジャコウネコ類の段階の狩猟方法だ。そして、このような食肉獣の基本的な段階から、ネコ類・イヌ類がそれぞれ分かち持つ2つの対照的な捕獲様式が進化したのである。
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